異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「きっと、アキトも同じ気持ちだったんじゃないかな?」
「!」
突然、皇帝陛下から秋人おじさんの名前が出て、あたしの肩がピクリと跳ねた。
「秋人おじさんのこと……ご存知でした?」
「うん」
皇帝陛下は仰向けに横たわり、腕を枕にしながら天井を見上げ頷いた。
「ぼくは、ヒトミと会ったことがあるからね」
「お母さんと……」
皇帝陛下がお母さんの名前を出して、はっと思い出した。
お母さんの出身地であるミッツ村で、最高齢のライムおばあちゃんから聞いた話を。
お母さんが15の年に帝国に呼び出され、戦争に加担するように命じられたけど。お母さんは古代兵器を使用されるのと、戦争に利用されるのが嫌で日本へ逃亡したんだって。
もしもお母さんに命じたのが目の前にいる皇帝陛下なら、彼は嘘をついてる可能性がある。
戦争を止められなかったと悔やむ人が、なぜ水瀬の巫女を利用する必要があるのか。古代兵器を使えば、取り返しがつかないことになるのは容易に想像出来るのに。
「どうして、ヒトミを。わたしのお母さんをご存知なのですか?」
「うん。だって、戦争に加担して欲しくなかったから会ったの」
「は?」
意味がわからなくてその顔をまじまじ見ると、皇帝陛下はポリポリと顎を掻いて顔をこちらへ向けた。
「ヒトミに日本へ逃げるように勧めて、その逃亡に協力したのはぼくだからね」
とても衝撃的な事実なのに、皇帝陛下はあっさりとおっしゃいましたよ。