異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
とてもじゃないけど、たった今皇帝陛下が告げた内容は俄に信じられない。
戦争を始めて古代兵器も利用しようとする帝国の皇帝陛下が、その鍵であるお母さんを逃がした?
ここは、素直にありがとうと言うべきなのかもしれない。だけど、あたしはどうにも胡散臭さが拭えなかった。
目の前にいるヘラヘラしたおっさ……皇帝陛下は、ちゃらんぽらんでいい加減でどうしようもない人だけど。理に適わないことはしない気がする。
この国の皇帝陛下ならば、自らの責任で命じた以上は勝てるように尽くすはず。
「……どうして、ですか?」
「ん?」
「どうして、お母さんを逃がしたんですか? あなたが戦争を命じたのに、それなのに勝てる方法を自ら放棄したようなものですよね?」
あたしがそう問いつめると、皇帝陛下はよいしょ、と上半身を起こして真顔になった。
「……なるほど。バルドが選ぶだけあって、さほどバカでもないようだな」
「それはどうも」
今まで頭空っぽと思われてたんかい、とヒクヒクこめかみが動きましたがね。自分が頭が良いとは思えないから、軽く息を吐いて気を鎮める。
「わたしの母にお会いして逃亡を助けて下さったことにお礼を。ありがとうございました。ですが、どうにもあなたにはなにか思惑があると思われてならないのですが?」