異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
皇帝陛下が差し出したのは、布にくるまれた手のひらに乗る大きさのもの。
(皇帝陛下がお母さんから預かっていた。お母さんは……あたしが皇帝陛下にお会いすることが判っていたの?)
皇帝陛下から受け取ったものを左手に持ち直す。一体なんだろう? 感触から言えば、丸くて硬い平べったいものだ。大きさの割にずっしりと重みがある。
なぜかこれを手にした途端、腰に挿した短剣と胸元にある翡翠の勾玉がほんのりと暖かくなった。
(なぜだろう……初めて見たのに……すごく懐かしい)
躊躇いながら薄紅色の布を丁寧に捲れば、見えてきたのはねずみ色の地味な彫刻。真円の彫刻物の裏を見ると、そこに自分の顔が写った。
「鏡……?」
《ようやく揃ったか》
「どわっ!?」
思わず落としそうになった鏡を、わたわたと持ち直す。落とさずに済んでホッとしたあたしに、ヒスイが半目を向けてきた。
《相変わらず落ち着かぬやつじゃ。これで母になると言うのじゃから嘆かわしい。ヒトミの方が年下じゃったが、よほど落ち着いておったぞ》
「わ、悪かったね! 落ち着きなくて……もとはあんたが急に出てくるからでしょうが。あれほど言ってもわかんないの!?」
鏡を抱えたあたしに白目を向けたまま、ヒスイはふっと手を上げる。すると、あたしが持っていた鏡が勝手に浮き上がって彼女のもとへ。
《ようやく揃った。巫女の神器である勾玉、剣、鏡……この3つが》