異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「えっ……これ、神器だったの?」
目の前で浮いてる鏡は、皇帝陛下を通じてお母さんから託されたもの。
胸元の翡翠の勾玉は代々の巫女に伝承されてきたもので、ヒスイの本体でもある。
そして、剣はハルバート公爵を通じて受け取ったけど。この剣が神器の一つだったなんて、思いもよらなかった。
(なぜ、ハルバート公爵がこれを持っていたの? それに、どうしてあたしに渡したんだろう。もしもハルバート公爵が闇側の人間なら、これを交渉材料として使うこともできたはず)
……わからない。 ハルバート公爵の意図なんて、凡人で会ったばかりのあたしには想像もつかない。
そりゃ渡され方は普通じゃなかったけど。何せ手が滑りました、と笑顔でヒスイにぶっ刺したんだから。 今思い出しても背筋が冷えますわ。
「神器って……どういうこと?」
鏡を手にしたヒスイに訊ねれば、いつもの半目を向けられる……すいませんね、何も知らなくて。教えられてないから仕方ないでしょうが。
《そなたが真の巫女になるための必要な道具じゃ。永霊界で大神にうかがったじゃろ。水瀬の巫女にはとてつもない力がある、と。それを引き出すための鍵じゃ》
ヒスイの言葉とともに、鏡に嵌め込まれた宝石のひとつが淡く虹色に輝いた。
《ふむ……やはり“これ”があるか。これを通じ感じるが、そなたの本来の力がとてつもないものだと判るぞ》