異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
おっさんとヒスイの話は辻褄が合う。
実際、この剣は風を起こしてバルドとアスカ妃の戦いを止めることが出来たんだ。でなければあたしに止める手段は無かった。
(でも……鏡をおっさんに預けた。それは味方で恩人である皇帝陛下だから、信頼するとして。ハルバート公爵に剣を預けた意味がわからない。お母さんはハルバート公爵のことを知って信頼してたから? それとも知らずに預けた?)
あたしの水瀬の巫女としての力を利用するなら、神器を自らの手元に置いた方が有利になる。なのに、ハルバート公爵はあたしに渡した。その意図はなんだろう?
あの胡散臭さ満載の笑顔の裏に、一体どんな思惑があるのか。
「ハルバート公爵はこの剣を預かっていたんですね」
「うん。だって預かった先代はお人好しもいいところだもん。お馬鹿過ぎて息子にあっさり暗殺されてんの~」
「……って! 鼻ほじりながら言うことですか!!」
重要かつ悲劇的な内容なのに、おっさんの不謹慎さに思わずツッコミを入れましたよ。人の死に関わる話なのだから、いくらなんでもその態度はあり得ない!
「いいじゃん。ハルバートだって案外強情で、息子の甘言にあっさり乗ったりしなかったんだ。あいつとは学友だったし……悲しいっちゃ悲しいけどな」
さしものおっさんも、きちんとすべきと考えたらしい。今は亡き学友の話題に姿勢を正した。