異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
(もしもあたしが同じような状況になったら……お母さんと同じ選択をするの?)
もしも、なんて考えたくないけど。今のあたしは甘い考えを許される立場じゃない。
最後に残った水瀬の巫女だから、古代兵器を動かす鍵になる。それだけでもとんでもないことなのに、皇帝陛下がおっしゃるにはあたしにとてつもない力があるらしい。全然そんな自覚はないけれども。
はあ、とため息を着いてから近くに置いたバッグを持ってきてもらい、中から取り出したのはハルトから託された秋人おじさんの手帳。シンプルなものが好きなおじさんらしく、黒い合皮の味気ない表紙が彼らしい。
パラリと捲れば、彼の几帳面さを表すようにきっちりと整った綺麗な字が並んでた。
平成9年という表記に、ピタリと指が止まる。
“綺麗なひとが河川敷で倒れていたので家で保護する”
――これ……もしかするとあたしのお母さんの様子? 発見時の様子を記録したってこと!?
当時はまだ中学生だったはずの秋人おじさんがどう感じて、どう行動したのか。お母さんはどうやって保護されたのか。興味が湧いて食い入るように紙面を見つめた。