異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



それからはミッツ村のライムおばあちゃんや、秋人おじさんの残留思念、それからいろんな人から聞いた話が次々と証明されていく。


身元不明者だったお母さんは記憶を無くした、ということで秋人おじさんと既婚者である姉の尽力で新しく戸籍が作られたこと。でも、あたしが生まれるまでは間に合わず、やむなく山村の産婆さんのもとで生んだこと。


身寄りがないお母さん……ヒトミを気の毒に思った秋人おじさんの両親が、結婚した娘の代わりにと義理の娘として迎え入れてくれたこと。


おじいちゃんとおばあちゃんはあたしが小学生に上がる前に相次いで亡くなったけど、あたたかくて優しくて。あたしもとても大好きだった。


手帳にはあたしの成長を見守る記述もあって、とても懐かしくて涙が出てきた。


あたしが初めて喋った言葉が、秋人おじさんに向けた「お~じ」なんて初めて知った。それを喜んでる秋人おじさんが、可愛らしくいとおしい。


けど……


それまで幼子の成長を見守り喜びに溢れる内容だったのに、急に変わったのが平成15年に入ってから。


――ヒトミの体調が悪くなってきた。聞いてて覚悟はしていたが、つらい。

と。書いた後からずんと重く苦しい内容へと変わってゆく。


そして……お母さんの亡くなる前後には、悲しみと辛さと混乱が混じっていて。切なさに胸が痛くなる。


それよりも、気になる記述が目に入った。


“あなたはディアン帝国に行ってはいけない。和のためだったらやめて。和はここで普通の女の子として幸せに暮らして、普通のひととして終わらせたいの。あなたが因果を掴めば和は巫女として巻き込まれ、ディアン帝国で悲しみと不幸に身を投じることになってしまう――最愛の人の裏切りに”


……お母さんの言葉。


巫女としての、予言?


最愛のひとの裏切りって……いったい、なに?


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