異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
自分だけの判断でお会いしていいものだろうか?
バルドは自分が帝都にいない間、弟に政務を任せていると話してた。それはとりもなおさず、彼を信頼している証で。バルドも評価できる実力があるなら、宮廷でもそれなりの重みと地位を得ているはず。
つまるところ、バルドのライバルともなる皇子だ。
たしか年齢は一つ下なだけで、皇后唯一の皇子ということで皇位継承順はバルドに継いで2位だけど、実際にはバルドと対等に張り合う――皇太子となる可能性はそれぞれ五分五分だ、とミス·フレイルから聞いた。
バルドは以前力を持ちたい……つまり皇太子に。いずれは皇帝にと願っていると語っていたのだから、あたしが単独で対立する立場の人間に会えば、確実に波紋が広がる。
(ライネス皇子がどんな目的で来たにせよ、あたしはバルドの妃になる立場だし。一人っきりで会うのはまずい)
「ミス·フレイル。至急バルドにお伺いを立てていただけますか?」
『承知致しましました』
ミス·フレイルはあたしの判断に文句を言わず、早速侍女の一人に伝言を託す。一応城内には電話線が引かれているけど、内密の行動だから盗聴の危険がない人伝のやり取りにした。
バルドはたしか執務室にいるはずだから、往復で30分もあれば大丈夫なはず。その間待たせるのは申し訳ないけど……とミス·フレイルに控え室にお茶菓子を出す指示をしようとした時だった。
向こう側が騒がしくなったかと思うと、突然バン! とドアが開く。
そして、ライネス皇子らしき人物が姿を現した。