異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
『お待ちください! ライネス殿下』
警護責任者が皇子を止めようと走り寄る。ロゼッタさんがあたしの前に立ち、更に侍女長であるミス·フレイルが2人の間に立ちはだかった。
『ライネス皇子殿下。淑女を訪れるにしては、少々品がない方法ではございませんか?』
身につけたスクエア型のメガネをキラリと光らせたミス·フレイルは、不穏な空気が漂う最中でも、相手が誰であろうと変わらない。そのプロ根性は尊敬できるレベルだ。
あたしもなにか言った方がいいかな?
確かに、ライネス皇子の訪れ方はあまり褒められたものじゃない。一応あたしは異母兄の妃になる身分なのだし、軽く注意くらいはした方がいいかも。
だけど、とあたしはライネス皇子を見上げる。
長身でがっしりした体つきはバルドに似てるけど、顔つきが全然違う。バルドは野性味溢れる凛々しさだけど、ライネス皇子はどちらかと言えば柔和に見える。つまり、優しげだけど。紅い瞳と長めの銀髪で印象がガラリと変わってた。
とりあえず、挨拶はすべきだよね?とあたしは長椅子を降りると軽く頭を下げた。
『お初にお目にかかります、ライネス皇子殿下。わたしは秋月 和と申します。以後、お見知りおきを』
『和様!』
ミス·フレイルの咎める声がして、すぐさま彼女に視界を塞がれたけど。
その直後――
『ははははは!』
唐突に、ライネス皇子が笑いだした。