異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
勝手に思い悩んでうじうじするよりも、バルドと話をしてみよう。もしも聞く耳持たない態度を取られたら、それでも諦めたりはしない。
この世界とこの国で、バルドのそばで生きるのだと決めた時。あたしは決意した……とことん彼を信じるのだと。
もしもバルドの本性が史上最低のクズ男だったとしたら、あたしが矯正する。ぶん殴ってでもど根性で変えてみせる。
大丈夫、あたしはもう1人じゃない。いつの間にかあたしの周りにはこんなにもたくさんの人がいてくれる。だから、大丈夫。
まだライネス皇子を睨み付けるロゼッタさんを宥めた後、あたしは彼ににっこり笑って見せた。
「もしもバルドがクズだったら、わたしが矯正します。夫を教育するのは妻の役目だと聞きましたから」
セイレム王国王妃であるセリナから聞いた、夫婦が上手くいくコツを披露する。ハロルド国王陛下を裏で巧みに操るセリナがあるからこそ、今のセイレム王国は医療と魔法大国となった。そんな彼女をあたしは尊敬するし、見習いたい。同じような実績は無理としても。
そんなふうに自分の気持ちを話したら、突然ライネス皇子は笑い出した。
「ははははは!」
肩を揺らして遠慮なく笑う様は、気持ちいいくらい自分の感情に正直な彼の性質を表してる。
「いや、やっぱあんたサイコーだ。父上が気に入っただけあるわ」
涙目でそう言われて、喜んでいいのか怒るべきかビミョーなのですが。
だが、とライネス皇子はもう一度警告を口にした。
「それでもバルドには気をつけろ。あんたなりのやり方であいつを変えるはいいが。やはりあんたが心配だ」