異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
そこで、ふと疑問に思う。
なぜ、ライネス皇子はこんなにもあたしを案じてくれるんだろう?
会ったのも接触したのもたぶん今が初めてで、個人的な関心や特別な感情を得られるほどの時間も経ってない。
敢えて理由があるとすれば、あたしが日本から来た水瀬の巫女で、彼がディアン帝国の第2皇子だということくらいだけど。
「なぜ、そんなにわたしを案じて下さるのですか?」
「あんまり信じてはもらえないかもしれないが、俺はあんたの血縁だから……と言えば信じるか?」
「……え?」
血縁? ライネス皇子が……?
それこそにわかには信じられない。 確か皇后陛下のご実家は小さな貴族で、あまり目だった実績は挙げてなかったと記憶してはいたけど。
彼はその一言を最後に口を閉ざす。すると――突然、違う侍女が慌てて入室を促してきた。
「し、失礼いたします……あの、バルド殿下が」
侍女が言い終えないうちに、部屋のドアが乱暴に押し開かれた。そして、そこに立っていたのはバルドで。
彼は、今までに見たことがないほどに不機嫌さを隠そうともせずに、ライネス皇子を睨み付けた。
「ライネス……何をしに来た?」
「兄上」
一応目上にあたる兄だからか、ライネス皇子は目礼をしてから顔を上げバルドをジッと見た。
「何も。ただ、和の顔を見に来ただけです。同じ血を引く者として」