異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
血縁者……ライネス皇子が。同じ血を引くってことは、もしかするとあたしの実父と関係が?
「あの……それはどういう」
気になってあたしが身体を乗り出して訊ねようとすれば、突然バルドがあたしの目の前に立ち視界を塞ぐ。
「そんなに睨まなくても、今日は何もしませんよ兄上。俺はただ、必要な話をしただけです……あなたが何を考えているのか、とね」
「…………」
ライネス皇子が暗に何を話したかを仄めかせても、バルドは何も言わずに微動だにしない。ただ、いつの間にかあたしの手を握りしめてきただけ。
だから、あたしも大丈夫だと伝えたくて、バルドの手をギュッと掴んだ。信じる気持ちが伝わって、彼が安心してくれればいいと。
「……和に何を吹き込もうが、無駄と思い知るだけだ」
一時は荒々しい空気を纏っていたバルドだけど、あたしの気持ちが伝わったのか落ち着いた口調でそう言ってくれた。
それは、あたしを信じてくれるという発言そのもので。不覚にも涙が出そうになる。
「……その言葉、後で後悔しても知りませんよ?」
ライネス皇子はまったく変わらない調子でそう話すと、あっさりと部屋から退出していった。
微妙な置き土産を残したまま。