異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……にしても、困ったなあ。あたしの荷物、なくなっちゃったよ」
「まあまあ。ひとまずお茶でも飲んで一息着きましょう」
レヤーが羽毛から取り出したのは、カセット式のガスコンロ……もはや、突っ込む気力も起きないよ。
砂から脱出してしばらく移動した後、辺りはまだ乾ききった土地ではあったけど、今までと違うのはぽつぽつと植物が見えてきたところ。森ほどではなくても、まばらに木が見える。 土は灰色に近い変わった色だった。
どうやら、渓谷から押し流されたのはかなりの距離と見ていいと思う。具体的にどのくらいかはわかんないけど。
「レヤー、あたし達ってどれくらい移動したか分かる?」
「そうですね……」
レヤーはその辺りの木の枝を手にすれば、猫の形をした絵を描く。たぶん、この大陸の地図だ。
「私たちが出発した集落はここです」
とレヤーが指したのは、かなり南の外れの方。帝都から1000kmも離れてちゃね。
「で、この山脈が大陸を左右に分けていますが……」
レヤーがまん中あたりでスッとタテに線を引く。
「この山脈の左……つまり西側はほぼディアン帝国の領土であり、東側は比較的温暖で湿潤な気候なので、幾つかの国に分かれてます。一番国境に近いのが、このセイレスティア王国ですが。どうやら私たちはその近くまで流されたようです」
そう言ったレヤーは国境付近に大きな×印を打った。
「ここからさらに東に向かえば、ちゃんとした町がありますよ」