異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……バルドのスケベ」
散々もて遊ばれて身も心も消耗しきり、今寝台のお世話になってます。文句の1つも言わなきゃ、と澄まし顔でお隣に横たわる皇子様に口を尖らせた。
「おまえが煽るのが悪い」
涼しい顔でシレッと言われて、どこがと悔しくなる。寄りかかっていたバルドの腕から起きると、むにっと彼のほっぺたを引っ張った。
「やっぱり、あたしよりも厚みがない。なんでこんなに脂肪とかむくみがないのさ~!」
「日頃から鍛えればいい……が、おまえは今は身体を労ることを考えろ」
バルドに手首を掴まれると、今度は彼の胸に顔を押し付けられた。うわぁ……厚い胸板が。彼の逞しさを感じて鼻血が出そう。
ぼっと顔を熱くしている最中、バルドがぽつりと訊ねてきた。
「ライネスに、何を言われた?」
やっぱりバルドも弟の言動は気になってたんだ。当然だよね、唯一無二の認めるライバルなんだから。
そこで、あたしはバルドの真意を確かめようと顔を上げる。彼の表情やちょっとした仕草を見逃さないために。
すう、と息を吸って気分を落ち着ける。
寝室で2人きりとはいえ、あたしは今からバルドに非礼な質問をする。いくら信じたいと思っていても、やっぱり怖いし躊躇する。彼は真摯な姿勢を崩さないと信じて……口を開いた。
「バルド、あたし……ライネス皇子から聞いた。あなたは最初ユズが欲しくて、失敗したから代わりにあたしを召喚したと。あたしはあくまでも2番手でユズの代わり。人形だと……懐柔は容易いって。本当に、そう思ってた? そして、今でも本当にそうなの?」