異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「和、ごめんなさい。私が水瀬の巫女であったばかりに……普通の女の子になって欲しかったのに。あなたは……あなたの力は強すぎる。このままでは……必ず誰かに利用されてしまう」
いつもの様にやわらかく頭を撫でられながらも、お母さんの声が耳に入り込んできた。どうしてそんなに悲しそうなのかと思うけれど、心地よい微睡みの中にいてそんな疑問はすぐに消えた。
額に、柔らかなぬくもりを感じる。お母さんのキスだ……と嬉しくなって、きっとあたしの顔は微笑んでいただろう。まだ小学校に入る前だから、いちいちそういった意味を考えないのは当たり前で。
深く眠りに落ちる前に、微かに届いた2人の会話を聞いた。
「……やっぱり……封じてしまうの? 和の力を」
「ええ。でなければ……必ず和は利用される。水瀬の巫女である限り。和は……おそらく歴代の巫女の中で一番力が強い。本当に目覚めたら、きっと私でも抑えきれないでしょう。
だから、必要な神器はあちらへ預けてきた。
神器と……そして、パートナーを得なければ和は目覚めない。こちらで力を振るわない限りは無関係でいられる。
今日のようなことは……二度とあってはならないの。
あんな……和が、自分が普通とは違うのだと。気付く前に……私ではすべてを封じきれないかもしれないけれど。
でも……すべてを賭けて、成し遂げるわ」
「ヒトミ……わかった。僕も……何が出来るかを考える。一緒に考えよう。和が幸せになれるように。僕も、あなたや和のためならすべてを失っても惜しくない。だって……僕は……君たちを」
深い睡魔に囚われたあたしは、すべてを聞くことなく眠りに落ちた。