異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



遠ざかる声と意識に、待ってと出した声は過去の自分だったか。それとも今の自分か。過去を見た夢と現実が曖昧で、それでもただひとつ解ったこと。


……それは、あたしがあの時したことがすべての始まりだったのだ、と。


水瀬の巫女として目覚めてもいなかったあたしは、濁流に流される子犬を助けたい一心で川を逆流させた。無意識に、力を使っていたんだ。


ふ、と目を開いたあたしは、そのまま身体を起こす。そして、知らず知らず涙がこぼれ落ちた。


「……そんな……嘘。全部……あたしのせいだったなんて」


両手で顔を覆って声を押し殺しながら涙を流す。隣にいる人に気付かれたくなかった……なのに。


彼は、何も言わずに黙ってあたしを抱きしめてくれる。そして、ゆっくりと髪を撫でてくれた。まるで、幼子をあやすように。


「バルド……どうしよう……全部……あたしが悪かったんだ。秋人おじさんが過去に行ってディアン帝国を作ったのも。お母さんが亡くなったのも。今まであったこと……全てが……あたしがいなければ起きてなかった」


今まで解っていたつもりはいた。でも、やっぱり全然理解していなかったんだ。自分がどれだけ重い罪を背負っていたか……を。

< 737 / 877 >

この作品をシェア

pagetop