異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「うわぁ……すごっ!」
思わずそう声を上げたとしても、仕方なかったと思う。
この世界に来てゆうに10日は経つけど、集落以外のひとを見るのは初めて。集落では主に泥造りの家だったけど、ここでは石造りが当たり前。道も歩きやすいように磨かれた石が敷かれていて、整然とした町並みが広がってる。
例えるなら、地方都市程度の賑わいがある。
肌の色も白かったり小麦色だったり。金髪から黒髪までどころか、緑色やピンク色の髪なんて初めて見た。中にはファンタジーにいそうな獣人みたいな人も。ふさふさの尻尾を見てると、触りたくてウズウズしてくる。
「ナゴム、コッチ」
「う、うん」
今あたしはフードつきのポンチョを被ってるんだけど。あたしを狙う人間がどこにいるかわからない以上、顔をむやみに見せちゃいけないって。なんか面倒くさいなあ。
ダチョウとレヤーは専用の宿舎に預けてある。レヤーは鳥らしく振る舞うと約束してくれたけど、何だか一抹の不安が拭えない。
戦士風のロゼッタさんは気後れせず堂々と町中を歩いてるけど、あたしはそこまで肝が太くない。けど、好奇心だけは誰にも負けないからキョロキョロとあちこちを眺めてた。