異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




わがままって……


そういえば以前にもバルドから同じことを言われた記憶はある。


でも、更に甘えろって言われても。今まで散々バルドには甘えてきたし、わがままも言ったつもりだけど。


「え……だってあたし……バルドには迷惑ばっかりかけてる。頼ってばかりだし……十分に甘えちゃってるよ?今だって一晩中付き合わせちゃって」

「おまえの今までのそれは、わがままとは言わない」


あたしの言い分はバルドにキッパリと両断された。それに、と彼は付け足す。


「おまえは一人ではない、と本当の意味で理解してないだろう? おまえは未だなにかトラブルがあれば自分の中だけで処理をし、解決しようとする。違うか?」

「……そ、それは」


バルドの黄金色の瞳でジッと見つめられて、その眼差しに耐えきれずに俯いた。すべてを見透かされそうな鋭い光が怖くて。


彼の指摘はもっともで、あたしは何か起きたらなるべく他の人に被害や迷惑を及ぼさないようにすると思う。それをどうにかするのは巫女である自分の役割だし、自分だけ大変な思いをするくらいで済むならと考えてる。

犠牲は少ない方がいい。最小限の被害で済むなら、あたしはどんな目に遭おうが構わない。


それはお母さんが亡くなってから一人で生きてきた癖みたいなもので、自分だけで解決するのは当然になってたから。改めて指摘されると、何がいけないのかと不思議に思う。


だって、あたしが泣いてても誰も手助けしてくれなかった。友達の芹菜以外、誰も気付いたり助けたりしてくれない。


芹菜とは学校と放課後以外一緒にいなかったから、ほとんどは自分でどうにかするしかなかった。8歳から9年間そうだったんだから、もう身に染み付いた習慣みたいなもので。あたしにはそれが当然なんだ。


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