異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バルドはただ黙って、あたしを抱きしめてくれた。彼の逞しい腕の中にいると、不思議と少しだけ不安が和らぐ。
そして、彼はこう言ってくれた。
「いいか? これだけは憶えておけ。オレは、おまえを……おまえ達を護る。何があってもな。そして、オレも死なないと」
「……バルド」
そういえばバルドは前にもそう言ったし、確かに生き抜いてきてくれた。彼は、ちゃんと約束は守ってくれる。だから……きっと大丈夫。
力強い彼の声に、ゆるゆると緊張が溶けていく。体の震えが止まって力が抜けていくと同時に、ゆっくりと眠気が意識を侵食していった。
……駄目だ。時折寝入ってはいても、一晩中ほとんど起きてたから眠くて堪らない。
「安心して眠れ。オレがずっとついてる」
「うん……あの、バルド……ごめんね」
「いい。これくらい何ともない。政務など後でどうとでもなる。それより赤子のことを思うなら、ちゃんと眠れ」
「ありがとう……」
寝台に横たえられて布団をかけられ、それでも不安でバルドの服を掴んでたら。彼にぎゅっと手を握ってもらえた。剣やペンを持つ皮が厚くゴツい指だけど……この手が、あたしは大好き。
ああ、バルドそのものだなって感じながら。ゆるゆると緩やかに眠りの世界へと沈みこんでいった。