異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
夢を見ないほどぐっすりと眠れたからか、起きたらとっくにお昼を過ぎてた。
バルドは約束通りにずっと側にいてくれて、一緒に昼食を摂った後に仕事に向かう。その際にはこう告げられた。
「午前中の閣議でおまえがオレの妃となることは了承され正式に決定された。後ろ楯となるのは母皇妃と、ハルバード公爵だ」
「えっ」
「今日の午後に公表され1週間後に婚約の儀、3ヶ月後に婚姻の儀式が決まった。各国の首脳を招いての盛大なものとなる。覚悟しておけ」
バルドは話すだけ話すと、事態が飲み込めずポカンと間抜け面のあたしを置いてさっさと仕事に行ってしまいました。
「えっ……アスカ妃とハルバード公爵が後ろ楯? 婚約? 婚姻って」
『和様』
また夢の中にいるようなぼんやりした頭に、ミス·フレイルの冷静そのものの声が入り込んできた。
恐る恐る振り向けば――案の定、紺色の地味な詰襟ドレスをきっちり着込んだ彼女がメガネをキラリと光らせる。
『――バルド殿下よりお聞き及びの通り、あなた様が妃となられることが決定いたしまして。大変喜ばしいことでございます。おめでとうございます』
「は……はあ……ありがとうございます」
いや、そんないつもと変わらないニコリともしない顔で言われましても。本当におめでたいと思ってくださってるのかちょっと疑問が。