異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



『婚約の儀式は1週間後と急でございますので、時間がございません。ご懐妊で体調も思わしくないでございましょうが、儀式には国中の有力者が招待されます。バルド殿下の妃となられるならば、それ相応の品位や振る舞いが要求されます。
従って、これより1週間。わたくしは付きっきりでお妃教育に当たらせて頂きますので、お覚悟のほどを』


きらり~ん、と。いつも以上にメガネが光り輝いています、ミス·フレイル。一点の曇りもない磨き込まれたレンズと同じで、彼女自身一分の隙もないきっちりした侍女スタイル。


きっと、寝起きのままだらしなくバルドに甘えてたことを……


『まず、手始めに。人前に出る場合はたとえ夫と言えど、そのような醜態を晒すことはお慎みあそばせ。皇族ならばすべての人々の手本となるよう、指先に至るまで常に神経を使わねばなりません。だらしない姿はだらしない心そのものなのですよ』


やっぱり始まってしまいました、ミス·フレイルのお説教。


そんな調子で今までの所行を散々あげつらわれてしまいました。


やっぱり……体調不良でずいぶん遠慮してくれたんだな、って解るくらいにこんこんと諭されて。気付いたら夕方……日が暮れてましたよ。どれだけあたしに対する不満が溜まってたんですかね。


『儀式には会食もございます。今回のお食事よりお作法のご指導を本格的にさせていただきますので』


楽しみにしていた夕食は部屋で、しかもミス·フレイルの監視&ご指導付き。とてもじゃないけど、食べた気がしない地獄が一時間半も続いて。精も根も尽き果てましたが……。


終了後にミス·フレイルからどっさり与えられたのは、ディアン帝国の歴史や様々なお妃教育の教科書約20冊。


……誰か、あたしを眠らせて下され。


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