異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「はあ、何それ? あたし、聞いてないんですけど!?」
レヤーの首もとを掴んで彼の体をブンブンと振れば、彼は目を回しながら「ぎぼぢわ゛る゛い゛」とおっしゃるけど。
「な·ん·で! 肝心のあたしにその話がされないの。一応巫女でしょうが、あたしは!!」
「う゛ぶ……っ……ひ、翡翠さんもぉ……き、気を遣ったんですよぅ……な、なな和さんがぁあ……大変だから……ってぇえぇぇ……うぷ……な、中味が出るううぅ……」
「それが、余計なお世話ってもの! あたしは当事者で渦中にある人間なんだから、ちゃんと話せっての、あの女狐!!」
ブンブンどころか、ゴンゴンと音が鳴るくらい激しくレヤーを振った結果。
「もう゛ダメ……うぶおっ(以下自主規制)」
……ちょっと、モザイクが必要な場面になり。阿鼻叫喚の地獄絵図と化した、と申し上げておきます。
「……あはは、ごめ~ん。ちょっとだけ力を入れすぎちゃった」
更にげっそりと窶れ、来た時よりふた回りはスリムになったレヤーに両手を合わせて謝っておいた。
「ダイエットできてよかったね! これでまたスイーツ食べられるじゃん。好きなだけね」
「……何か言葉の端々に仕込まれた棘がグサグサ刺さるんですが……」
「気のせいだよ! あたしは当分スイーツ禁止だからって、そんな八つ当たりめいたことしないから」
ギリギリギリギリギリギリ。
「いだだっ! クチバシを引っ張らないでくださいぃ」
涙目のレヤーが流石に気の毒になったからやめてあげましたわ。スイーツ禁止だからといって、これっぽっちも彼に逆恨みなんてしてません、ええ。ほんのちょっぴりとしか。