異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。





「翡翠さんもぉ……大変みたいなんですよう」


げっそり窶れてミイラと化したレヤーから蚊が鳴るような声しか出ないのは、たぶん気のせいでせう。


「そういや頼まれなくてもこの頃姿を見ないと思ったら、そんなに忙しいの?」

「はぁい……天上界にちょっと行ったりとか……あだだっ!クチバシ引っ張らないでぇえ」


あたしの疑問への答えにまたも疎外感を感じて、笑顔でレヤーのクチバシを掴んだ。


「だ·か·ら~あたしも当事者でしょうが! 何であたしにそんな重要なことを伝えないのかな? ん!?」

「す、すみませぇん! ひ、翡翠さんに口止めされてたんですよう~和さんは無茶をするからって」

「は?」


レヤーの発言がにわかには信じられなくて、思わずレヤーのクチバシを放せば。彼は勢い余って真正面から床に激突。そのままピクリとも動かなくなったけど、放って置けば復活するからスルー。


「え、ヒスイがそんなこと言うなんて……どういう風の吹き回し?」


(って言うか天上界? ヒスイが天上界に行くなんて滅多にない。ということは……何か重大な局面を迎えつつあるってこと?)


そういえば、と思い返す。セイレム王国が未曾有の危機に陥った時。レヤーがとある気になることを言ってたと。


「ねえ、レヤー。あなた以前【闇】と何度も戦った経験があるって言ってたよね? それ、聞かせてもらっていい?」

「は……はい」


やっぱり復活したレヤーは、まず始めにこう教えてくれた。


「【闇】は、文字通りすべてを覆い尽くすことができます――それこそ惑星全体を。私が初めて戦った時は一国すべてが【闇】に覆われ……すべての生命が異形のものと化しました。微生物や細菌に至るまで、すべてが、です」
< 748 / 877 >

この作品をシェア

pagetop