異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「勘弁してくださいよぅ……もうしませんからぁ」
壁を背にして両翼で頭を抱えながら涙目で震えるレヤー……
むずむずとイジメ……もとい。構いたくなる気持ちを必死に抑える。
「それで、たしかレヤーは【闇】には通常の術では対抗できないって話してたよね? それじゃあどうしたらいいかな」
「うう……はい」
まだぶるぶると震えながら、怯えた目でこちらをチラ見する巨大な鳥。……いかん、いかん。ついつい構い倒したくなる。
「私が以前いた世界でも同じような事がありましたが、その時は“世の王なる者”――つまり『世王(せいおう)』の力が唯一の対抗手段でした」
「『世王』?」
「物質的な意味においては、絶対的な存在です。大神様は控えめにおっしゃってましたが……完全に覚醒をすれば、この世界を構成する物質をすべてを支配下に置くことが可能となります。惑星を一瞬で破壊することも創造することも。宇宙すら意のままにできるそうです。
実際、私が前に知り合った世王の少女は住む惑星を真っ二つにしかけましたから。あながち嘘ではないと思います」
「……何それ?」
あまりに壮大過ぎて、どっかのマンガか映画の話かって言いたくなる。
「そんな大げさな……そんなの実際にあり得ないでしょ。
それにさ、仮にそういう人がいたとして。どうやって制御するわけ? 何もかも思いのままだったら、悪いことをしても止める人がいないじゃん」
「それが、不思議なことに私が知る限りは悪意を持つ人間がなったことはありませんでした。中にはその辺の雑草や虫が世王になったケースも知っています。世王というものは必ず人間や準じた種族がなるものではありません。神すらその出現は予測不可能なのですから」