異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
物質的な意味では絶対的な存在……。
あまりにあり得ない。だけど、もしもそれが本当ならばとんでもないことになる。
「それじゃあ……それじゃあさ。もしもだけど……」
あたしは息を詰めながら、ゴクリと喉を鳴らす。今から言うのはとんでもない内容だ。想像しただけで大それていて、身の丈には合わない。しっとりと汗をかいた手のひらを握りしめ、緊張したままレヤーを見上げる。
「なら…………
お金持ちになれるんでしょ!?」
「……は?」
「だって、そうでしょ? 物質的に絶対無二の力があるなら、好きなだけお金を創っても誰にも咎められない! あ、でも流通貨幣と合わなきゃおかしいか……なら、一等の宝くじをばんばん当てる。金銀財宝もいいね~貴金属や宝石はどこに行っても価値あるし。
あ、健康だって保証されたものでしょ? なら、好きなだけスイーツ食べまくる! それから遠慮なくお洒落して……イケメンに囲まれてみたいわあ。逆はーってちやほやされて(以下略)」
――30分省略――
“だ……駄目だこりゃ。煩悩全開だ”
その時レヤーが内心でそう思ったとか思わなかったとか。暴走のあまりにあたしは完全に目が座り、人が違ったように恍惚と笑う様は背筋が寒くなるほどだった……と後に彼は語った。