異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「ゴホン。それはともかく……」
いろいろと錯乱し過ぎたせいか、時間ですと告げにきた侍女がそっとドアを閉じていったのは、きっと気のせい。
そして、レヤーがかなりほっそりして棒きれのように見えるのも。 こんな短時間で窶れたのかもね。
「一応、調査はしているんだよね? 【闇】に関しては」
「バルド殿下も手勢を使われてますし、軍部や警察や諜報部でもかなりの人員を割いてはいるみたいですが。なかなか尻尾を掴めないようですね」
レヤーがすらすらとそういった情報を話せるのは、彼自身にそれに触れる機会があるからと、独自の情報ネットワーク、そして術による情報収集が可能だから。
「となると、やっぱり庇護する有力者があると見るのが妥当だよね」
「そうでしょうね。私も調べた限りは【闇】の気配が帝都でもあるのは確実なのですが、どこまでかは特定が難しかったです。おそらく、かなり高度な隠蔽や撹乱術を使ってるからでしょう。そういった高難易度の術が可能な魔術師や術者を使うのは、相当な財力がなければ不可能かと」
「財力……ねえ」
レヤーもこのところ積極的に【闇】関連について調べてくれていた。調査という名目であちこちのグルメを堪能していた恨み辛みを目線で投げたら、何故かビクッ! と怯えて震え上がってたけど。
「……やっぱり……どっかの貴族が匿ってると考えるが妥当かな」
あたしの脳裏には、セイレム王国でモテていたアイカさんの姿が浮かんできた。
「……彼女は……赤い霧を使って人びとを惑わしてた」