異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
これも何度も考えてきたことだ。アイカさんがセイレム王国で見せた異常な状態。あれだけの異性を虜にして、夫婦や恋人をたくさん破綻させたのは事実。そして、熱心な信奉者を生み出していた。
あたしに見せた意地悪な笑みや憎々しげな顔。響いてきた内心では明らかにあたしを嫌ってた。あの後表面上何事もなく親しみすら感じさせる態度で接してきたけど。
ヒスイは彼女も日本人の血を引いてると言ってた。皇家自体がそもそも秋人おじさんの血を継いでるのだから、その血縁となればそうなるけど。彼女の出身についてもう少し調べてみた方が良いかもしれない。
「ハルバート公爵に関しては今のところ、シロとしか言えませんね」
あたしの考えを読んだかのように、レヤーがそう話を続けてドキッと心臓が鳴る。そうだ、彼には貴族関連の調査もして貰ったんだ。
「五家の有力貴族で一番怪しいのは、南部に領地があるアロハイド家でしょうか」
「アロハイド侯爵家? え、だってそれって……皇后陛下のご出身じゃなかった?」
レヤーの提供した情報に、驚くというよりもあり得ないという感情が先にわき起こる。だって、皇后陛下のご子息である第2皇子のライネス殿下は、あたしに日本へ帰ることを勧めてきた。もしも彼が母の実家でそんな企みを関わっていると知ったなら、黙っているはずがない。きっと何かをする……と考えて。
彼が、わざわざバルドが居ない隙を狙い日本へと強く勧めたのは。まさか……知ったからこそだったのか、という疑念が浮かんできた。