異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
そういえば、とあたしは思い出す。
アスカ妃が変わったと言われるのが、現皇后陛下が妃になられた時期と一致すると。
バルドも当時のお母様が変わられたのは、皇帝陛下が寵愛する妃への嫉妬からという疑念を抱いたみたいだけど。あの鋭い彼がそう思い込んでいるとは考えにくい。
実際、帝都に入った時にお会いしたアスカ妃は最初こそ噂通りに振る舞っていたものの、結局はさばさばした彼女の本質を見ることができたし。息子を思いやる愛情が感じられた。
あのアスカ妃が軍部を唆したり、皇帝陛下を操って他国へ戦争を仕掛けただなんて到底信じられなかった。
それに、皇帝陛下も戦争を止められなかったと悔いてる。陛下自身だって抑止となり得なかったというならば、彼以外に大きな権力を持ってる人間が後押ししたと考えた方が自然だ。
アスカ妃はわざわざ自分から罪を被った。噂では彼女が戦争を仕掛けた張本人となっているけれど……彼女の人柄から言えば到底信じられない。だから、とあたしは一つの仮説に行き着く。
「ねえ、レヤー……もしかするとバルドのお母様のアスカ妃って……誰かを庇って敢えて悪評を被ってないかな?」
「やっぱりそうお考えになります?私もそう思いました。私が見立てるに、アスカ皇妃は清廉潔白でしょう。彼女が犯人ではあり得ません」
レヤーも賛同してくれたことで、もしやアスカ妃が庇ってるのは皇后陛下ではないか?という疑念が出る。レヤーもそれは賛成ということで、(一度、皇后陛下にお会いした方が良いかもしれない)という結論が出た。