異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「え……この霧って」
赤い霧はあらゆる隙間から入り込み、確実に空間を満たしていく。
けれど雷焔の炎はそれをも焼くせいか、あたし達の周囲はさほど影響ない。その代わりに……
「Ouch! 熱いです。燃えてしまいますううぅ……」
レヤーがいつも通り尾っぽに火を点けてパニックに陥ってたけど。
それはいつものことだからさておき、赤い霧は絶えることなく流れ込んでくる。やがて、周りがよく見えないほどの濃度の霧が部屋を埋め尽くした。
「……なんか、気分が悪くなる。なんだ、これ!?」
ロゼッタさんが心底嫌そうに顔をしかめ、手のひらで口と鼻を覆う。たぶん本能的なものだろうけど、赤い霧が危険なものと察しているみたいだ。
「そうですか? 何だか気分がよく……あらひれほれ~~」
突然、レヤーが目を回したかと思うと、よろめきながらくるくる回ってバタンキュー。なにやらぶつぶつと「気持ちいいれふ~」とか何とか言ってる。
何だか、酔っ払いみたいな彼は尻尾がブスブスと焦げてたものの、幸せそうな顔でイビキをかき……。
「って、寝るなああ!」
すこおおん!
「あいだあ゛!」
あたしが投げたティーカップは見事にレヤーの額に命中し、彼は両翼で頭を抱えながら割れると悶絶してるけど。この非常時に眠るアホがいるか!
「ロゼッタさん、大丈夫?」
「なんとか。けど、この霧……ふつうじゃない」
「それは間違いないよ」
ロゼッタさんは青い顔になりながらも、気丈にもあたしを庇おうとする。その気概に感謝しながら、どうすべきか考えた。