異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
一番頼れそうなレヤーはぶっ倒れたし、ヒスイは地下遺跡の調査に向かってる。護衛のロゼッタさんは気力で立ってはいるものの、明らかに顔色が悪くて相当な我慢をしているように見える。これ以上負担はかけられない。
「雷焔、この霧って……」
こうなったらダメ元で訊ねてみるけど、やっぱり雷焔は答えてくれなかった。神をもどうにかできる四龍の子どもだから、人間なんてちっぽけな存在の疑問には答えない……そう思ったんだけど。
《……邪なる意思を感じる》
雷焔はしばらくの沈黙の後、あっさりとそう答えた。
「邪なる意思?」
《人間を害するは大概人間。浅ましいものだ。同じ種族であろうと大した意味なく命を奪うとは愚かな》
雷焔の話は端的過ぎて逆に難解。はっきりしているのは、やっぱり誰かが他人をどうにかしようとしていること。
そういえば、とあたしはロゼッタさんとレヤーの様子を見比べながら思う。
ロゼッタさんは体調不良で倒れそう。レヤーは酔ったように顔を赤らめてる。この違いはどこかで……と記憶を探った時。不意に思い出したのはセイレム王国の出来事。
他国のお妃様方との会見の時に、ユズの侍女が体調不良になったけれど。それは赤い霧というか妙な香りが漂った時じゃなかった?
そして、逆にハーレムを形成していたアイカさんを赤い霧が取り巻いていた。
もしかすると……この霧は性別で効果が変わる?
そして、女性を排除し男性を意のままに操れるのだとしたら。
これは、かなり不味い事態になる。