異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
この赤い霧を吸い込んだ男性すべてがアイカさんの意のままになるとしたら……
想像よりも早くドアが乱暴に開けられ、乱入してきたのは警備を勤めるはずの近衛兵だった。
咄嗟にロゼッタさんが腰に帯びていた戦斧で応戦し、力任せに押し返してから昏倒させる。あたしも襲いかかってきた近衛兵を雷焔で威嚇しつつ、隙を見つけてお眠りいただく。神器が揃ったお陰か、ちょっとだけ力の使い方がわかってきた。
「いい加減にしろ。いつまで寝てる!」
「あ゛だっ!」
よほど腹に据えかねたのか、珍しくロゼッタさんがレヤーの頭を爪先で蹴り上げた。
ハッキリ言って、こりゃ仕方ない。体調不良でも誰かを守りながら必死に戦う中、その横で幸せそうな顔で寝てたら誰もが腹立つでしょうよ。
「レヤー……今のは完全にあんたが悪い」
「すみません、すみません! あまりに気持ちよくて、ついうとうとしてしまいましたあぁ……」
あたしが氷点下の視線をくれてやると、三つ指揃えて土下座したレヤーは、ぶるぶる震えつつ涙目で言い訳を重ねる。
「ゆ……夢を見たんですよぅ。地下遺跡で銀色に輝くモノが動き出す夢を」