異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「は~極楽! 生き返る~」


いくら暑い土地にいたって、熱いお湯に浸かる幸せは別物。多少硫黄の匂いがしたって、お風呂に入れることを思えばへっちゃら。


「ナゴム、イッパイドウ?」

「あ、あはは……あたしはいいよ。その代わりに、これをもらおうかな」


お湯に浮かべたお盆には、陶器に入ったお酒と果物。果物は凍らされていて、お風呂で熱くなった体にひんやりと心地いい。


ライチみたいな味だけど、まさか本物じゃないよね?


「ナゴム、ゲンキデタ?」

「うん、もちろん!」


あたしは勢いよく頭を振ると、果物をお盆に戻してちょっと泳いでみた。10mくらいの広さがあるし、お客は少ないからいいよね。


(一度、お風呂で泳いでみたかったんだよね)


長年抱いてた密かな野望を叶えるべく、犬かきであちこち泳いでいく。一応男女別の配慮がなされてるから、男性にあたることはない。


(そういえば……こんなにのんびりしてていいのかな? セリス皇子とハルトは無事でいるのか……心配だよ)


レヤーがメッセージを送り続けてるし探索してると言うけど、数百kmも流されたって言うし……ちゃんと連絡が取れるかわからない。不安が膨らんでいる最中、どんっ! と衝撃を感じて、慌てて沈みそうになった相手を助けて起こした。


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