異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「うわぁあ……間一髪でしたね」


レヤーの顔からダラダラと汗が流れてるけど、確かに彼の言う通り。あたしでさえ背筋がヒヤリとした。


近いうちに第一皇子の妃になる人間をああもあっさり殺そうとするなんて。しかも、ここは帝都の皇帝陛下のいらっしゃる居城。国の要となる場所だ。国内で最も警備が厳しいここで、これだけ大掛かりな事件が起きた現実が恐ろしい。


赤い霧に包まれてぼんやりした姿のスマガラ城を眺めていると、ふと脳裏に浮かんだ景色で反射的に叫んだ。


「レヤー、上に飛んで! なるべく高く!!」

「はいっ……うわわっ!」


レヤーはあたしの言葉を受けて必死に翼を羽ばたくけれど、急上昇するあたし達目掛けて空を裂き襲いかかって来る無数の矢があった。


「まだ弾丸じゃないだけマシかな……わわっ!」


あたしがのんきに呟いた途端、弾丸がすぐ横を掠める。レヤーの術では【闇】属性に対して対抗できないから、あたしが神器で祈り結界で何とか凌ぐ。


「レヤー、もっと高く飛べ! このままだともたない」


ロゼッタさんが戦斧で矢を叩き落としながら叫ぶ。後から後から無数に飛んでくる【闇】の武器に、あたしの不安定な結界がいつまで保つかわからない。だから、ロゼッタさんの判断は正しい。


「はい! 皆さんしっかり掴まっていてください」


レヤーが本気モードに入ったらしく、徐々に体を上向かせるとほぼ90度の直角の態勢になる。そして、そのまま急上昇していった。



< 762 / 877 >

この作品をシェア

pagetop