異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《詳しい説明は後じゃ!今はそのような些事に拘っている場合ではなかろう》
ヒスイはピシャリとあたしの言葉を封じ込める。確かに今は何よりも優先すべきは、他の生命の安全確保と危険の排除。ごちゃごちゃ言うのは後でいい。
「……わかった。後でちゃんと話してもらうから、状況を説明してくれる?」
《ああ、見ての通りに古代兵器は動きつつあるが、封印が強固な上にかなりがっちりと幾重にも重なっておる。解除には今しばらく時間は掛かるじゃろ。その間におまえは封印を再度かけ直すのじゃ》
「……わかった」
あたしはヒスイのアドバイスに頷いた。まだかなり納得しきれないけれど、私情を優先すると事態を悪化させるとの判断はあたしにも解る。今自分が無事だからそのまま安全圏まで逃げる、なんて卑怯者にはなりたくない。
あの城には、まだバルドが……ミス·フレイルが……他にもアスカ妃や皇帝陛下を始めとするたくさんの人々がいる。高貴な人たちだけでなく、下働きの方や動物たちも。そこにある生命は1つ残らず無事に助けたい。そう思う。
セイレム王国での苦い経験を思い出すたびに、胸が張り裂けそうな苦しみと痛みを感じる。あんな悲劇を繰り返さないために、あたしは自ら望んでバルドと契約し巫女となった。
ヒスイの言う通りだ。
今、あたしの力を使わずしていつ使うんだろう。
短剣を握りしめる手に力を込めると、ほんのりと胸元の勾玉が熱を帯びる。地下の様子を映した鏡の映像は違う場所へ切り替わった。