異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「……わかりました。では、急ぎます。しっかり掴まっていてください!」
頷いたレヤーは数度力強く羽ばたくと、猛スピードで飛び始める。
その間何もないはずもなく、繰り返し襲撃を受ける。それは、カレー屋に近づくにつれて頻度が高くなっていった。
「これだけ警備が厚いならば、やつらには重要な場所ってことだね」
「そうでしょうね。カレー屋の地下からはとてつもない力を感じますし」
レヤーはあたしの言葉に賛同すると、新しい術を発動させる為になにやらモゴモゴと呟き始める。
「ナゴム、気をつけろ。囲まれつつある」
後ろであたしを庇うような体勢のロゼッタさんは、油断なく視線を動かし警戒をしてる。手にした盾と戦斧を構え襲撃に備え緊張を高めてた。
まだ深夜になる前の帝都はいつもならば人通りも車も行き来が激しくて、首都にふさわしく賑わいを見せていたはずなのに。今は帝都を覆いつつある赤い霧の影響か、何もかも止まってしまってる。人々は倒れて動くものは【闇】の連中のみ。
葉脈のように帝都に張り巡らされた結界は、ノイズのように時折ぶれ、あちこちが粒子となってその流れが途切れ消えつつある。
おまけにライフラインやエネルギーの供給が完全に押さえられているのが見えた。
その上黒いローブに全身を包んだ連中が、あの移動できる円盤に乗りあたし達を追撃してくる。どれだけスピードを上げようが、執拗に追いかけてきた。