異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「……しつこいっ! あんたらはストーカーか!!」


思わずそう言いたくなるほど、黒衣の連中はぴったりと追いかけてくる。あたしを排除するためか、容赦なく攻撃を加えて……って?


「そういえば……奴ら、あんまり本気で攻撃してないんじゃない?」

「……言われればそうですね」


レヤーもすぐ賛同してくれたように、セイレム王国の時とは違いこちらへの攻撃が緩い。取り囲まれても、一斉に襲撃するでなし。ちょっかいをかけるように時折誰かが来るくらいで、基本的に複数での攻撃はない。


本気で排除するならば取り囲まれた時点で一斉に襲ってきたはず。


……何を考えてる?


何らかの思惑があってあたし達を生かしているのだとしたら……。


「……このままカレー屋に突入はたぶん、ちょっとまずい事態になりそうだよ」


今までの状況と巫女としての勘を合わせれば、少なくとも古代兵器の近くへ直接赴くことは避けた方が良いと判断できる。鏡がいろんな場面を見せてくれる中で、大切な人たち……バルドやアスカ妃や皇帝陛下や他の人々が無事なのは確認できたから、焦らずに落ち着いて行動すべき。


「直にカレー屋に行かないとなると……う~ん……どうします?」


レヤーも飛ぶ方向を決めかねているのか、ぐるぐると旋回しだす。ちょっと待って、とあたしは胸元の勾玉に手を添えて祈った。


(行くべき道を示して)


閉じた視界に、光の道が現れて方向を示してくれる。レヤーに伝えると、彼はわかりましたとそちらへ方向転換。


「今度こそ振り切ります。しっかり掴まってください!」


術を発動しつつレヤーは本気モードで急発進した。


< 768 / 877 >

この作品をシェア

pagetop