異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「うわわわっ!」


今までにないスピードで追いつけなくなると見たか、突然四方から網と縄のようなものが飛んできた。


「そのまま飛べ! わたしが斬る!!」


ロゼッタさんはそう叫ぶと、立ち上がって戦斧を思いっきりふり回す。それはただ斬るだけでなく、レヤーを中心にして小さな旋風を起こし、接近する縄や網をことごとく断ち切っていった。


「すごい……」

「これ、もらったから」

「え?」


ロゼッタさんは左手首に今まで無かった青い腕輪をしてる。それは、サファイアのような透明な石でできた精巧な細工物で。あたしのものとよく似てた。


そして、あたしとは違う種類の加護を感じる。これは……風?大気……空。そんなイメージだ。


「これ、誰に?」

「ライネスってやつ。昨日、寝る前に突然やって来て、“これやるから巫女をきっちり護れ”って言われた」

「は?」


「あ、あとこうも言われたな。“アスカ妃の斬撃を受けるなど頼もしい。巫女よりおもしろい女だ”とか」


緊張感が高まる中で聞いた話なのに、あたしは思わず目が点になる。


ライネス皇子がロゼッタさんにこの腕輪を贈ったってことは……


腕輪も言葉も彼女はまったくもって意味が解っていなさそうだけど。それを聞いた限りはライネス皇子はロゼッタさんに並々ならぬ関心があるということ。


しかも、皇族にとって生涯につき一人にしか贈れない分身への束縛の腕輪を贈るほどに。


……つまり、ロゼッタさんはライネス皇子に求愛されたも同然なのに。当の本人は全然まったく解ってない。


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