異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
突然起きたロゼッタさんの恋愛沙汰には驚くけど、思えば彼女はとても魅力的な女性だ。こんなちんちくりんなあたしを、姉のように家族のようにずっと護り支えてきてくれたし、とてつもない美人でナイスバディ。戦士の実力も折り紙つき。若くて性格よし。今まで色めいた出来事が無かったのが不思議なくらい。
ただ、彼女に訊いたことはないけれど気になることはある。
バルドと旅をしていた時、アラカ地区でロゼッタさんは自分を“乙女でない”と話してた。
当時は意味がさっぱり解らなかったけど、いろいろとあって成長した今なら解る。ロゼッタさんは乙女でない……つまり既に経験ありってことが。
ロゼッタさんの部族はかなり閉鎖的だったけど、その代わり部族内の絆はかなり深い様で。部族長の娘である彼女なら、ずいぶんと縁談もあっただろうな。もしかすると既に結婚してる? 焦りを感じたあたしは、咄嗟に彼女に訊いた。
「ね、ねえロゼッタさんは……その……決まった相手がいるの?」
「相手? 何がだ?」
「将来を約束した相手とか……家族になりたい男性とか」
遠回しな言い方は通用しなかったようだから、思い切ってストレートに訊いてみた。こんなデリケートな問題に顔を突っ込んで良いのかわからないけど、彼女の相手はライネス皇子だ。うやむやにしちゃいけない。
ドキドキしながら返事を待っていると、「いいや」とロゼッタさんはあっさり返した。
「故郷ではわたしに敵う男はいなかった。少なくとも自分より強い男でないと夫にしたくない」
「そ、そっかぁ……」
彼女らしい答えにホッとしたような。不安が増したような。何だか複雑な気持ちになった。