異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
闇の奴らはかなりしつこかったけど、どうにか連中を振りきれた。向かったのは首都からやや離れた土地で、一見すると何もない荒れ地にしか見えない。
植物は丈の低い雑草程度がごくわずかにしか生えているだけ。後は乾燥した赤茶けた土と岩が主で、水は見えないけど涸れた川らしき痕があった。
たぶん、灌漑(かんがい)の治水事業の計画ではかなり後回しにされてる場所。帝都からかなり近いのに敢えて涸れた川が放置されていることに意味がありそうだ。
そもそも、ここにまで結界は及んでない。けれど……。
「レヤー、降りてもらっていい?」
「構いませんが、大丈夫ですか? 連中が襲ってくるやもしれませんよ」
「気配は感じられないし、当分は平気だと思う。術は軽い目眩まし程度でいいよ」
あたしが大丈夫と言うのに渋るレヤーに、ロゼッタさんが加勢をしてくれた……。
「ナゴムが行きたいと言ってるなら、行くべきだ。首と胴が別れたいか?」
……戦斧を首筋にピタリと当てて、そんな物騒なことを言われれば。レヤーでなくても涙目になるよね。
「わ、わかりましたあぁ……き、斬らないで! さすがに私も、首だけになったら生きていけませんよぅ」
……何そのホラー。
想像すると怖いしあえてスルーしつつ、ようやく目的地に降り立つ。
勾玉が示していた光の道筋はこの涸れた川に沿っているように見えた。