異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。





鼻血が出る寸前で、幸いなことに外に出ることができた。お湯に血を流さなくてよかった……。


お姫さま(仮)もとい……キキさんに甘味処に誘われ、そこで話を聞いてみることにした。
ロゼッタさんは甘いものは苦手らしく、またお酒を注文してる。あたしは果物の盛り合わせを選び、キキさんは小さなパンケーキ。注文を終えてから、木のテーブルに向かい合って座る。


「……で、あたしが巫女って知ったのはどうして? それと、なぜ日本語が話せるの?」


水色のワンピースを着たキキさんは濡れた髪を左右に結い、頬を赤らめたまま落ち着きなく視線を左右に動かしてる。その様子は、とても計略に長けた刺客とは思えない。演技だとしたら大したものだけど。


「あ、あの……わたしは、実は……セイレスティア王国の王太子妃殿下に仕えさせて頂いてる侍女です」

「妃殿下?」

「は、はい……もとは戦争孤児でしたが、王太子妃殿下が……下働きだったわたしを取り立てて下さったんです」


それまでモジモジと落ち着きなかったキキさんは、自分の仕える人のことを話す時はずいぶんと誇らしげに見えた。きっと、恩人以上に尊敬できるいい関係を築けてるんだろう。


彼女が語る内容で推察すると、妃殿下は気さくで誰にも平等に接してくれる。国民からの人気も高く、次期王妃としても不足ない能力がある――って。そんな素晴らしい人に仕えることができた幸運はすごいと思うけど、なんでそんな人とあたしが会わなきゃいけないの? と首を傾げていれば。キキから意外なことが語られた。


「実は……妃殿下は、昨年召喚されセイレスティア王国へ来られましたが。もとは日本の女子高生であられました」



< 78 / 877 >

この作品をシェア

pagetop