異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
【龍】の記憶(データ)から、この惑星の歴史の真実が見えた。
――【龍】は決して破滅や破壊を望んだ訳ではなく、むしろ人びとを救い呪縛から解放し続けたのだ。
《巫女よ》
【龍】は、語る。
《我は始まりの巫女と約した――未来に必ず我を真の意味で眠らせるものが現れるであろうと。それまでは決して目覚めぬと》
「……それが、わたしだと?」
《そうだ。我を導く最初で最後の正しき巫女。真実の水瀬の巫女よ……我は……もう疲れたのだ》
数千年と時を刻み続けた【龍】。人工知能を載せられ人を想うプログラムをインストールされ、思考と心に近いものを得た彼は、それほどの長い間どれだけの苦悩に苛まれてきたのだろう。
心を宿したのならば、死を何とも思わないはずがない。護るべき対象である人の命を奪い続ける過酷な現実に、きっと悲しみ苦しみ悩んだ。
けれども、奥底に刻まれた人に対するプログラムに従うしかない。自分の存在意義であると同時に、己の果たす役割でもあるのだと。
それは、生物の遺伝子に刻まれた本能の習性ようなもの。呼吸をするように、水を飲むように。なぜと問いかけても、止めようとしても止まるはずがない。
それゆえ、【龍】は望んだ。
自らを止めて永遠の眠りへ導くモノを。
それを約束したのが、わたしの祖先――初代の水瀬の巫女だった。