異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
すっかり元通りになった帝都ではいつもと変わらない日常が送られていて、そしてあの日何があったかを記憶している国民はほぼいなかったらしい。
らしい、というのは人伝に聞いたことで、自分自身では確認してなかったから。
あの後倒れたあたしは3日間延々と眠り続けたみたいで、起きたら既にすべてが終わっていた。
「無茶をする」
目が覚めてすぐにバルドの顔が見えたけれど、あたしへの彼のひと言目がそれだった。
たぶん、腕輪を通じてあたしのだいたいの行動を把握してたんだろうな。後はレヤー辺りを脅して聞いたか……と彼をチラリと見れば、レヤーは頭頂が見事に禿げ上がって涙目でブルブル震えてる。予想通りの展開で苦笑いするしかない。
もともと用意された部屋は【闇】の連中の仕業で爆破されたから、今は城内の別の部屋なんだろう。ベージュを基本に温かな色彩のほどほど広い部屋にある天蓋付のベッドに寝かされてた。
「無茶って……仕方ないよ。他に方法はなかったんだし」
「そうかもしれないが、オレも力にはなれたはずだ」
いつも通りの無表情なバルドだけど、どこか悔恨の情を滲ませている。もしかすると……“おまえと子どもを護る”と言った誓いが果たせなくて悔しかったのかな?
確かに、バルドは約束通りに生きてくれてる。お父上の皇帝陛下を護った上で、自分がちゃんと生き残ってくれた。
あたしはそっとバルドの手に触れて、彼を見上げた。
「バルド、心配かけてごめんなさい。だけど……あたしはあなたが生きてくれたことが何より嬉しい。それだけで頑張ってよかったって思うよ」