異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。





頭頂がすっかりハゲたレヤーが、チラチラとこちらを窺い見てる。涙目で頭を押さえたままブルブル震えてるその様子に、苛め……もとい。いじりたくなる気持ちを押さえて声を掛けた。


「レヤー、なにか言いたいんでしょ?」


あたしが気を利かせて声を掛けただけなのに、なぜレヤーは羽毛が逆立ち1mほど飛び上がる?


「ひぃ……すみません! な、ななな何でもありません!!
私ごときがここに居てはいけませんよね。ごめんなさい、許してください! ここにいて申し訳ありません! 生きていてすみません。生まれてきてすみませんん……」


スライディング土下座より高速に、レヤーは全身を床にくっ付けて謝ってきた。つまりアジの開きみたいな状態で床にうつ伏せてる。


……………。


「何で謝るの? あたし、なにかしたっけ?」


そういえばあたしがレヤーにナイフを投げたり、ロゼッタさんが首を斬るぞと彼を脅した程度のことはあったけど。いつものことだから、それくらいでは特に怖がったりはしないよね。


となるとやはり……と隣にいるバルドを見遣れば、彼は相も変わらず無表情なままレヤーを見てるけど。あたしの話を聞くために相当な脅しを入れたな……って思う。


って言うか、生まれてきてすみませんと言わしめるほどの何をしたのさ、バルドは。


あたしは半目でバルドを軽く睨んだ後、レヤーに落ち着くようにと促した。


「大丈夫、もうバルドに無体なことはさせないから。それで、なにか話があるんだよね?」

「うう……はい」


レヤーは涙目のままだったけど。安心させるため微笑んだら「ひいっ!」と後ずさった。


……何でじゃ?


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