異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「わかったんですよぅ……」
ぶるぶる震えながら頭を抱えるレヤーは、半泣きでそれだけ絞り出した。
「わかったって、何が? 主語がなくて意味がわかんないよ」
「【闇】の拠点ですうぅ……ゆ、許してくださいぃ」
《なるほど。れやーはその膨大な悪意に触れてしもうたようじゃな。じゃからこのように震えておるわけか》
ヒスイはふわふわとレヤーの元に飛ぶと、彼の背中をつつく。瞬間、レヤーは「ぎゃっ!」と羽毛を逆立てて飛び上がった。
「すみません、すみません、すみません! ごめんなさい!! 申し訳ありませんん!!!」
涙を流しながら平伏するレヤーが流石に気の毒になって、からかい楽しむヒスイを睨み付ける。
「ちょっと、あんた性格悪すぎ。からかうつもりならよそでやってよ」
《何を言う。わらわは【闇】に籠る悪意の残骸を祓ってやったのじゃぞ。文句を言われる筋合いはない》
ツンと顎を上げたヒスイだけど、確かにその指先に灰色の霧が留まりそれを彼女が振り払って消したのが“視え”た。
「悪意……人の念みたいなものか」
《そうじゃな。【闇】を成す大半は人為的なもの。人の負の感情を吸い込み力を増す。じゃから、れやーの中にあったアレはわらわが祓わねば、巨大な【闇】と成長を遂げただろうの》
「ほ、本当ですか? よかったあ……ありがとうございます。助かりました」
レヤーはペコペコとヒスイに頭を下げるのも道理。だって、神に近い御上と融合していた力ある巨鳥なのに、気付かないうちに【闇】の種を取り入れてしまっていたのだから。どれだけ連中がすさまじい力を持つかわからない。