異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「では、そちらへ特殊部隊を投入し制圧する」
バルドが迷いもせずにキッパリと言い切ったのを、レヤーが真面目な顔で頷いた。
「そうですね。私が知ったと相手が判れば、おそらく拠点自体が潰されるはずです」
「わたしも賛成だ。獲物に時間を与えてはろくな結果にならない。考えるより動いた方がいい」
今まであたしのそばに控えていた護衛のロゼッタさんも、バルドの意見に賛同した。
おそらく彼女は狩りや実戦の経験から、戦士としての直感でそういったアドバイスをくれたんだ。長年戦いで研ぎ澄ませた彼女のそれは、バカにできない重要なもので。あたしは無言で頷いた。
「あたしも、もう猶予はないと思う。【龍】には約束して一時的に眠ってもらったし、封印は【闇】の影響が及ばないように持ち直したけど。他の方法を使って壊そうとするはず。
例えば、古代の遺跡に眠るスーパーテクノロジーを使えば……【龍】のメインシステムにアクセスし、プログラムを書き換えることも出来る。
そうなればあたしの呼びかけにも二度と答えない、ただ破壊の限りを尽くす自立型破壊兵器となってしまう」
【龍】の記憶(データ)に蓄積された、とても悲しくとても孤独な光景。高度な人工知能とプログラムを持つ彼は、思考や感情という揺らぎを持つ今の【龍】は……確実に“心”をその身に宿している。
【闇】側の唯一にして最大の盲点はそこだろう。
よもや、命がない無機質な“もの”に心が宿るなんて。無味乾燥な現実主義者には信じられないに違いない。
だけど……
あたしは、感じた。
【龍】の深い悲しみと嘆きと孤独な魂を。
だからこそ、彼の為に約束した。この世界を平和にするのだと。
二度と、彼のような存在を生まないために。