異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。


あたしが【龍】との間のやり取りと、そのきっかけになった彼の記憶(データ)について話すと、ヒスイがなるほどと頷く。


《あの古代兵器はそのような由来があったのか。わらわも知らなかったぞ》

「そりゃあ、ね。天上の神様にも知りようがなかったと思う。だけど、龍はただ望んだだけ。みんなが平和で穏やかに暮らせる世界を……」


その思いは創造者たる女性に託されたもの。


ただのプログラムに基づいた行動かもしれないけれど、今は【龍】の想いも籠っている気がしてならない。


無機物で構成されたから、ただの「モノ」だから。そんな思考を自分でするはずないと否定されるかもしれない。そんな懸念はバッサリ否定された。


「“心”があるだのないだの、人間に過ぎぬ我々が決めていいものではない」


そう言い切ったのはバルドで、いつもの仏頂面で言うからきっと幼子がいたら泣いてしまうレベルですよ。


「人間が己の中で考え決められることなど、たかが知れている。それゆえに他者が必要となり補いあうものだ。己の未熟さや危うさを知る者は、断定など滅多にしない。愚かな者や小心者に限って物事はこうだと決めつけ安心したがるものだからな」


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