異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
バルドの言葉を聞いたヒスイは、なぜかゆっくりと口の端を上げる。古代風の服の袖を口元に当てると、ふふふと意味深な笑い声を漏らした。
《なかなか面白いことを言う皇子じゃな。人間というものをよく解っておる》
「それで? 悪いけど、あたし達にイタズラしたり遊ぼうとしないでよ。そんな暇なんてないんだから」
《無礼なやつじゃ。わらわだとて時をわきまえておるわ》
それより、とヒスイはあたしに生ぬるい視線を向けてくる。
《なかなかよいパートナーのようじゃな、和。この皇子ならば信じ任せることが出来そうじゃ》
「………………」
あのイタズラ好きで気まぐれでプライドの高いヒスイが、誰かを褒めたり認めたりするなんて。にかわには信じられなくて、あたしは思わず彼女を凝視してしまいましたよ。
「ヒスイ……何を企んでるの?」
《何も。強いて言うならば、この地に巣食う【闇】を根絶を願うだけじゃ。ヒトミの……代々の巫女の願いでもあったのだからな》
ヒスイはそう話すと珍しく俯いて胸に手を当てる。そこには、あたしと同じような翡翠のペンダントが存在していた。
《約束したのじゃ、初代の巫女と。必ず【闇】を駆逐するのだと……それから千年経ってしもうたが……ようやく終わらせることが出来る。ならば、わらわも協力を惜しまぬぞ》