異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
《終わらせるのじゃ、これで》
ヒスイはあたしたちの真ん中に降り立つと、ぐるりとみんなの顔を見てキッパリと言う。
《あの【龍】の哀しみも、水瀬の巫女の役割も、災いのもとも。全ては【闇】を駆逐すればよいのじゃ》
ヒスイからみなぎる強い決意に、あたしもしっかりと頷いた。
「うん、終わらせよう。ううん、終わらせる。これ以上悲劇を繰り返さないために……」
思えば、秋人おじさんもお母さんもセリナも……その他のたくさんの人たち。数えきれない人々が巻き込まれ人生を狂わされてきた。
お母さんは慣れた世界を離れ逃亡し、異世界の日本で若くして亡くなった。
秋人おじさんはあたし達に関わったため、時間を遡ってこちらへ渡り皇帝の夫となって帝国成立に尽力した。
セリナはあたしを狙う連中によってこちらへ連れてこられたけれど、幸いセイレム王国のハロルド陛下に助けられたけれど。それが元で還れなくなり、王妃となってこちらで生きている。
そのセリナの息子のセリス王子はあたしを護るために絶命し、蘇生はしたものの全ての記憶を失ってしまった。
他にも、たくさんの人たちが哀しみ苦しむ様を見てきた。
すべてが、水瀬の巫女と【闇】に関わることで起きた悲劇。
ならば、最後の水瀬の巫女として。この手で決着を着けなければならない。
これは巫女としての責務や責任感や義務感からじゃない。
あたし自身の意思で決めたことだった。
「終わらせる。だから、みんな……力を貸して!!」
あたしのお願いに、みんながそれぞれ力強く頷いてくれた。