異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「うん、いいよ」
「……………」
【闇】との戦いの許可を得るため皇帝陛下に話をしに行ったら、あまりにあっさりと許可をいただけて気が抜けてしまいましたよ。
彼はあのだらしない格好で私室にいた訳でなく、ディアンの民族衣装である着物に近い服を着て政務を取っていたけれど。あたしとバルドの謁見願いを聞いた途端、すぐにお目通りを許していただけた。
プライベートルームではなく専用の謁見室で相対したということは、バルドは皇族でありあくまで臣下の皇子という立場でお願いに上がったということ。
もちろん、あたしも彼の婚約者として臣下という姿勢を取った。
すると。謁見の間には皇帝陛下の他に、アスカ妃にハルバード公爵の姿まであって。あたしは思わず警戒をした。事実、護衛を務めるロゼッタさんまでもが構えた。
彼を信頼する材料はあまりない。けれど、皇帝陛下が呼ばれたならこちらに拒否する権利はない。
複雑な気分でバルドが話す声を聞いていると。皇帝陛下よりも先にアスカ妃が口を開いた。
「ふむ……やはりそなたもあれを疑っておったか」
「はい」
母の言葉にバルドは躊躇うことなくキッパリと頷く。それは、一連の事件を引き起こした犯人についての話だった。