異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
「さあ、どうでしょう?」
ハルバード公爵はそれだけ答えると、乾いた笑みであたしから視線を外すとそれを皇帝陛下に戻した。
「皇帝陛下に申し上げる。我が妻を捕縛する許可を」
「ハルバード公爵……!」
あくまでも冷静に妻を追い詰める手段を口にした彼に、思わず声を掛けようとしたけれど。バルドの手で制されて叶わなかった。
「やつは、公爵として、夫として、男として。自分なりにけじめを着けるつもりだ。それを止める権利など誰にもない」
「……そうかもしれないけど」
幼なじみであるバルドには、公爵の考えはお見通しだろう。彼に理解を示して邪魔をするまいと考えている。それは間違ってないだろうけれど……。
一人息子について嬉しそうに話すアイカさんの笑顔が頭から離れない。あまり構ってやれないと寂しそうに笑った顔も。
少なくとも、アイカさんは子どものことは憎からず思っている。お腹を痛めて産んだなら当たり前かもしれないけど、彼女には母親としての情があるように見えた。
なら、その父親である夫のことは……。
「良かろう、許可をする。好きなだけ力を使い捕縛せよ」
「はっ!」
凛とした皇帝陛下の言葉が、謁見室に響き渡った。